男性で普段着着物を楽しむ人が増えています!
そして既製品の浴衣やリサイクル着物(古着)を、それなりに着こなせるようになってくると、「自分の好みの反物で着物を誂えたい(仕立てたい)!」って思う様になります!
で、実際に反物を探してみて「これいい!」と素敵な柄を見つけたとして、何も深く考えずに購入!
それっていろいろヤバいよ!
その反物では、自分の納得のいく着物を作れないかも知れません!
分からないことは「お店の人に確認すればいいじゃん」って思うかもですが、商品を買って欲しいお店の人は、不都合なことは敢えて言いません!!
では男物の着物を作るなら反物の長さはどうすればいいのか?
今回の記事では、「反物購入後で後悔しない選び方!」についてお話します!
この記事ではこんなことを知ることができます!
- 反物選びの落とし穴?着物店での体験からみる注意点!
- 後で後悔しない反物選び方とは?最低限の予備知識!
- 男物の着物を作る!具体的な必要な反物の長さは?幅は?
- 洋服生地で着物を仕立てる裏技!
これらを知ることで、一期一会の魅力的な反物との出会いを逃しません!
基本的に男性目線ですけど、女性の方にも役に立つ内容です。
最後にはちょっとした裏技も紹介します。
良かったら最後まで読んで行って下さいね!
着物店での体験からみる注意点!
好みの着物を仕立てるために反物選びの落とし穴!
まずは僕の着物店での経験からみる注意点をお伝えします!
えっ?着物屋さんに聞けば失敗しないんじゃない?
実はそうでもないんだよー!
落ち着いて見ていられない
僕が着物を着始めて少しした数年前、あるふっと入った着物店でのこと。
当時「そろそろ自分サイズの着物を仕立ててみたい」と反物を見ていました。
そこへ「お着物、着られるんですか?」と店員さんか声かけてきました。
…で、いろいろ反物を引き出してきて、店員さんがずっと話しかけてくるんです。
矢継ぎ早に説明してくるので、情報過多で焦りました。
慣れた洋服と違い、着物の知識は深くもなければ広くもない、今持っている知識を引き出しながら思案するには、賑やか過ぎます(笑)。
全然、落ち着いて見ていられないワケです。
正直、接客するなら、ものを聞いた時だけにしてほしい…。
「仕立てられますよ!」を信じるな!
そんな中、「こんなのどうですか?」と勧められた反物、なかなかいいデザイン。
「これ僕で仕立てられますか?」と聞くと、「仕立てられますよ!」と店員さん。
でも反物幅が小さいかなと思い「裄丈(袖の長さ)出ますか?」と質問。
すると、近くにいた男性店員の着物の少し短めな袖を指差して、「うちのスタッフもこんな感じですよ」とアピールするワケです。
そして「袖を継ぐこともできます」とも。
「いや、好みじゃないので…」とその時はお断りしたんですが、後に勉強するなかで「短い袖は作業着としては向いている」ということを知ります。
いや、僕の求めているのは、作業着ではなくて普段着ですから!
店員の「仕立てられますよ」を鵜呑みにして、全部を信じてはダメです。
「売りたい!」の強い着物店は要注意!
お店やっている以上、儲けを考えるのは当たり前です。
…が、「ともかく売りたい!」が全面に出過ぎている着物店は要注意です。
この場合、
- 袖が短いと下の襦袢が出てきてしまう
- 継ぎあとが目立つ・目立たない …などなど
を、ちゃんと説明するべきですし、男性スタッフの袖を見せて煙に巻くのもどうかと。
予備知識で理論武装しよう!
自分好みの着物を誂えようと反物選びするなら、後に「こんなはずじゃなかった!」をなくしたいですよね。
顧客満足より営業第一の店員さんに、売りたいだけの反物を押し付けられないためには、予備知識で理論武装をしっかりとしましょう。
そしてそれは、一期一会になりがちな自分にピッタリの魅力的な反物を逃さない、その知識にもなります。
ここからは、着物初心者さんが後悔しないで済むように、反物選びに役立つお話をしていきます。
最後までチェックしてみて下さいね!
また、話が長くなり過ぎるので割愛しますが、着物店に入る前に、自分が着物を着たいシチュエーションは必ず決めておいくこともポイントです!
イメージがある程度出来ていれば、店員さんの言葉にも惑わされにくくなります。
後で後悔しない反物選び!状況の予備知識
反物選びに影響しそうな状況や環境についてのお話。
洋服にはない注意点があるんだよ
日本人の平均身長の推移
反物の中には、未だに昔の日本人のサイズ感のものも多いんです。
数十年前の日本人の平均身長は、男性160cm・女性148cmでした!
一方、ここ最近の日本人の平均身長は、男性172cm・女性158cmと、10cmほど伸びています。
当然、腕の長さの平均も同様です。
この平均身長の推移とともに、反物のサイズの主流も変化してきていると言えると思います。
そして、今の反物サイズの主流は幅1尺(≒37.9cm)で、身長167cmの僕あたりが裄丈(袖の長さ)ギリギリなのを考えると、若干追い付いてない感がありますね!
古い規格の反物は小さい!
古い反物サイズの主流は、幅9寸5分(36cm)以下でした。
また、比較的余裕のある反物の長さについても、柄によっては問題が出てきます。
昔の日本人は背が低かったワケだけど、腕のいい当時の職人さんは、そんな日本人に似合うように反物を作ってきました(特に女性)。
例えば、絵柄・図案が素晴らしい反物があったとして、今時の身長で着物を誂えた場合…、
- 残念なところで絵柄が切れる
- 空間が空いて間延びする
- ギュと詰まった感じになる
- 特に裄丈が十分に出ない
ということがあると思います。
逆に言うと、小柄な人は一般的に洋服において「選べない」ことが多いと思いますが、着物だとよりどりみどり!!
リサイクル着物は宝の山!?
着物は糸を解けば反物に戻る(裁断されている状態だけど…)最高にサスティナブルな衣類です。
リサイクル着物を仕立て直すという選択肢もあります!
そう考えると、まっさらな新品にこだわらなければ、リサイクル着物は宝の山(笑)!
- 正絹(絹)の高級素材でも激安
- 職人さんによる丁寧な手仕事の着物でも激安
- 多くの古着が捨てることなく再活用できる …などなど
メリットたくさんで、他の衣類にはない大きな可能性を感じるワケです!
一方でもちろんデメリットもあります。
- 汚れや傷や擦れなどの生地の傷み
- 独特なタンス臭が気になる
- 仕立直しするだけの長さに余力がない場合がある(特に裏地付きは判断つかない)
- 直線裁断でなく洋服のように裁断され反物に戻らないものもある(最近の既製品に多い)
- 手縫いでない場合、ミシン痕が残ってしまっている …などなど
対処としては、
- 仕立て直し前提でそもそも大きめを買う
- 羽織など生地量の少ないものに仕立て直す
- 別の生地を継ぐ(個性が出ていいかも) …などなど
こんな感じで活用のしようはたくさんあります!
後で後悔しない反物選び!数字の予備知識
反物についての数字は、着物初心者には分からないことばかり…(汗)!
特に数字はちんぷんかんぷん!
「鯨尺」って何!?
昔、クジラのひげの長さを基準にしたそうです。
和裁用の物差し
鯨尺(くじらじゃく)とは和裁用の物差しのこと。
ちなみに、建築業界などで使われる「尺貫法」とは単位(尺・寸・分)は一緒でも、長さは別物なので注意!
尺貫法の1尺は約30.3cmだけど、鯨尺の1尺は約37.9cmで尺貫法の5/4です!
鯨尺は、着物業界では今でも使われるので、反物探しはこの一尺37.9cmと覚えておくと便利!
鯨尺の単位
丈(じょう)・尺(しゃく)・寸(すん)・分(ぶ)、から成ります。
それぞれ1/10ずつ小さくなっていくので、慣れたcmに直すと、
- 1丈 ≒ 3m79cm
- 1尺 ≒ 37.9cm
- 1寸 ≒ 3.79cm
- 1分 ≒ 0.379cm(3.79mm)
となります!
反物の長さをcmで表してみよう!
具体的な実例でみていきます!
37.9cm×尺.寸分で数字を当てはめれば簡単計算!
例題1 1尺5分なら…
37.9×1.05=39.795(約40cm)
例題2 1尺1寸5分なら…
37.9×1.15=43.585(約43cm)
反物のサイズが影響するもの
反物のサイズによって、着物の仕立てに必要な幅や長さが確保できない場合も!?
反物の長さと関係「身丈」
「身丈(みたけ)」は、身長に準じ「衿の首の付け根から裾の下までの直線距離」。
必要な反物の長さを求めるには…、
身丈×4枚+袖丈(好みによるが49cm前後)×4枚+おくみ(身丈−12cm程度)×2枚+縫しろ(20cm程度)
で計算できます!
※おくみ:着物の前幅を広く作るための、衿先側に縫いつける細長い布。
例えば、僕の身丈は142cm(だいたい身長から25cm引いた程度)だから…
142×4+49×4+(142−12)×2+20=1044cm
となります。
一般的な反物の長さは、3丈2尺の12m程度。
平均身長の男着物ならまず問題ありません!
ただ、おはしょりで25〜30cm取られる女着物と、高身長の男性では大問題!
例えば着丈170cmなら…(男性身長なら200cm程度、女性身長なら170cm程度)
170×4+49×4+(170−12)×2+20=1212cm
3丈物の反物を越えてしまう!
【補足1】4丈物の反物はあるものの、好みで選べない…、ならば同じ物を2反使う方法もあります。もしくは同じ物の柄違いを使い「片身替わり」という遊び心を出してもいいかも!
【補足2】身丈は2種類ある?基本的には肩山の真ん中あたりかから下まで測ります。ただ衿の下から背中心を下まで測ると、ズレが生じます。特に女性は衣紋を抜くので差は大きくなります。
反物幅と関係「裄丈」
「裄丈(ゆきたけ)」は、腕の長さに準じ「(腕を45°に垂らした状態で)首のつけ根から肩山を通り手首のくるぶしまでの長さ」。
ある反物幅の出せる、裄丈の最大幅を求めるには…、
(反物幅−縫いしろ2cm)×2
一般的な反物の幅は37.9cm(1尺)で言えば (37.9−2)×2=71.8cm となります!
例えば、僕で言えば裄丈71cm程度(身長167cm)なのでギリギリ!
ただ、腕の長い人や、一般的に身長170cmを越えてくると危険域!!
腕の長い人は、 反物幅が40cmを超えるワイド(キング)幅の反物を選ぼう!
最近では数は少ないものの、1尺1寸5分(43cm超え)の反物も出てきています。
【補足1】この時、[肩幅の半分=袖幅]であったとした時の最大値です。当然、多くの方は[肩幅の半分<袖幅]です!もし、反物幅が足らないといって無理に[肩幅の半分=袖幅]で仕立てると、身幅が大きくて脇の下が余るような、着にくい着物になってしまいます。
参考値として僕の着やすい着物で、34.5cm(肩幅の半分)+36.5cm(袖幅)=71cmでした!
【補足2】布を継いで裄丈を伸ばす方法もあり、継ぎ跡の目立たない柄を選ぶのもいいです!
反物幅と関係「身幅」
「身幅(みはば)」は、胴回りに準じ「胴回りの一番太い部位のサイズ(基本的にヒップサイズ)」。
身幅は、前腰幅(前側の腰骨〜腰骨の長さ)と後ろ幅2つ分(ヒップの厚み)から成ります。
反物幅に影響するのは、一番広い「後ろ幅」で計算式は…、
(腰周り−前腰幅)÷2+ゆるみ分1.5cm(これでヒップの半分、後ろ幅1枚分)
※前腰幅を(腰周り÷2)−8cm とするなら(前側の腰骨〜腰骨の長さを測ってもOK)、反物幅と腰周りの関係性は…おおむね、
腰周り÷4+6<反物幅
となります!
というわけで、9寸5分(36cm)の小さい反物だと、腰周り110cmを超える人は注意が必要!
ちなみに(本筋と逸れますが)…、着物選びで身丈と裄丈を気にする人が多いけれど、身幅を気にする人は少ないです。
身幅は小さいとはだけやすいし 大きいとブカブカで美しくない!
実際の胴回りと、身幅の数値に乖離があるほど着づらい、と言えます。
既製品の着物は、身幅の大きいものか多いので、選ぶ際は自分のヒップの膨らみと後ろ幅(×2)の数字が近いものを!
男物の着物を作る時に反物の長さ・幅はどうする?
数字だらけでイヤー!
大丈夫!一回自分のサイズ感が分かれば、あとは選ぶだけ!
具体的な反物の選び方にいきましょ。
反物選びの予備知識まとめ
ここまでをまとめると
- 「鯨尺」は和裁において長さを測る際に用い1尺≒37.9cm
- 一般的な反物のサイズは、幅が1尺・長さが3丈(≒11.3m)
- 反物長さには「身丈」に影響
- 反物幅には「裄丈」・「身幅」に影響
- 古い規格は小さい
- リサイクル着物には検討の余地あり
ということでしたね!
では、実際に売られている反物の種類を確認していきます!
反物の長さの種類
ここまで「長着を作る」ことを前提に話してきました。
※「長着」足首まで隠れる長い着物のことで、一般的に「着物」と捉えられるイメージでOKです。
ここでは、男性ならアンサンブル(セットアップ)という羽織込みのものや、女性なら振袖といった着物を作るための、反物の長さも参考までにご紹介。
言い方を変えると、背の高い人は、このあたりまで検討の範囲に加えると、裄丈を継いだり反物幅さえ合えば視野が広がるかもしれませんね。
羽尺(はじゃく):羽織が一つ縫える長さ(流行りに左右されるので一般的なもの)
- 2丈4尺(≒9.0m)~2丈6尺(≒9.8m)
着尺(きじゃく):大人の長着が一つ縫える長さ
- 3丈物 3丈2尺(≒12.1m) →男性の長着ならまず大丈夫!
- 4丈物 4丈3尺(≒16.2m) →小振袖(卒業式)・中振袖(成人式)
アンサンブル:長着と羽織を同じ生地でつくるセットアップ
- 5丈物 5丈6尺(≒21.2m) →大振袖(結婚式)
- 6丈物 6丈2尺(≒23.4m) →背の高い人・長着2つ分にも!
反物の幅の種類
幅の種類はおおむね下記の通り!
是非、先の計算式で自分のサイズから割り出してくださいね!
大き過ぎるものは、持て余すので注意です。
- 9寸3分(≒35.3cm)
- 9寸5分(≒36.0cm)
- 9寸8分(≒37.1cm)
- 1尺(≒37.9cm) →裄丈71cmの僕でギリギリ?
- 1尺5分(≒39.7cm) →裄丈75cm
- 1尺1寸(≒41.6cm) →裄丈79cm
- 1尺1寸5分(≒43.5cm) →こちらはほぼ見かけない!
洋服生地で着物を仕立てるなら自由度高し!
最後に、普通の生地屋さんで見つけた洋服生地で着物を仕立てる、そんな方法を紹介します。
着物と言えどファッションです!
ファッションは自由なはず。
というワケで、「洋服生地の持ち込みOK!」な着物屋さんがあるんです!
そのお店は、東京の池袋駅西口に店舗を構える「ゆめこもん」さんです。
洋服生地なら、幅広なものが多い上、メーター売りもあって無駄も出ません。
当然、体格の大きい人のみならず自由度は高いですね!
何より「唯一無二のオリジナル着物」が作れるのは魅力的!!
持ち込み生地のサイズ目安は以下の通り。
「<生地幅が110cmの場合> ※裄 73cm以上を想定
身長150cm 女性⇒4.2m 男性⇒3.9m
身長160cm 女性⇒4.4m 男性⇒4.0m
身長170cm 女性⇒4.8m 男性⇒4.2m
身長180cm 女性⇒5.0m 男性⇒4.3m
<生地幅が140cmの場合> ※裄 73cm以上を想定
身長150cm 女性⇒3.6m 男性⇒3.4m
身長160cm 女性⇒3.7m 男性⇒3.5m
身長170cm 女性⇒3.8m 男性⇒3.6m
身長180cm 女性⇒3.9m 男性⇒3.7m
上記の数字は「最低限」の長さでご紹介しています。
ご購入の際は、少し余裕をみてお求めになることをお勧めします。
また、体型によっても少し変わってきます。
まずはお気軽にご相談ください。」
◆きもの屋 ゆめこもん 基礎情報
住所 〒171-0021 東京都豊島区西池袋5丁目1−10 第3 矢島ビル 3階
TEL 0359448540
営業時間 13時00分~19時00分
定休日 水曜日
ぜひチャレンジしてみて下さいね!
「男物の着物を作る時に必要な反物の長さは?」のまとめ
というワケで、「男物の着物を作る時に必要な反物の長さ」についてお話してきました。
- 着物店での体験からみる注意点
- 反物選びの最低限の予備知識
- 具体的な必要な反物の長さや幅
これらを知ることで、一期一会の魅力的な反物との出会いを逃しません!
ちなみに僕はメジャーを持ち歩いたりしてます。
そして、洋服生地で着物を仕立てる裏技もご紹介しました。
自分の着物を仕立てると、もっと着物ライフが楽しくなるよ!
ぜひ参考にして頂いて、自分の愛着の持てる着物を仕立ててみて下さいね!
ご覧いただき、ありがとうございました!